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ハーブ&ドロシー・ヴォーゲル夫妻。
妻の収入を生活費にあてて、夫の収入をすべて現代アート作品の蒐集にあてた。多いときは、週に25もの展覧会に足を運んで。売れる前の若い芸術家たちと親しくなり、気にいった作品を安く買い集めた。その数は、4000点にものぼる。

ヴォーゲル夫妻はいつからか、現代アート界では有名な存在になっていた。彼らが展覧会のレセプションに足を運ぶと、皆が握手を求めて寄ってくる。アーティストたちにとっては、ヴォーゲル夫妻の眼鏡にかなったということが最高の評価になった。もっとも、夫の職場である郵便局の同僚たちは、寡黙で勤勉な彼がそんな人物だとは誰も知らなかったが。

作品のなかには売却すればかなりの価値になるものもいくつも含まれていたが、ひとつの作品も売ることはなかった。「コレクション全体でひとつの作品。だからひとつでも売ることは、一枚の絵画を破ってしまうようなもの」。買う基準は三つだけ。好きな作品。お給料で買える作品。小さなアパートの部屋における作品。

彼らはその膨大な作品を、すべて美術館に寄贈することを決意する。いくばくかのお金をとオファーされても受け取ろうとしない。しぶしぶ受け取ったそのお金は、再びアートの蒐集にあててしまった。ワシントンの国立美術館ではそのコレクションを管理することができず、結局全米50州の美術館に50作品ずつ配るというプロジェクトがはじまった。

なぜこの作品を観て涙が止まらなかったのか。

それはこの作品が屈指の現代アートコレクターとしての夫婦に焦点を当てただけでなく、二人の生きざまを通じて、私たちに本当の豊かな人生とは何か、人生にとって根源的な問いを突き付けるからだろう。そして何より、彼らが送った人生は、少なくとも理屈の上では、我々誰しもが送ることができるはずなのだ。
真に豊かな人生とは —- 岩瀬 大輔 : アゴラ - ライブドアブログ (via ibi-s)
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